カタツムリの殻は炭酸カルシウムの結晶からできている。
でんでんむしの愛称で呼ばれるカタツムリの殻を電子顕微鏡でのぞいてみました。
カタツムリの殻はどんな仕組みになっているのでしょうか。小さな幼貝から巻数
を増して成長しますが、どのようにして接合していくのでしょうか。生息する地域
はせまく、その移動距離はかぎられるカタツムリですから、炭酸カルシウム結晶の
集合機構の変化は生息域の環境を反映していることが考えられます。
1. 殻を破断し、生長線に平行な方向や直交する方向の断面を観察対象とします
(A・B)。走査像
2. 貝殻には非晶質の硬タンパク質物質の薄層があり、これが貝殻の成長をもたら
します(A)。貝殻断面には規則的な結晶の集合が見られます(B)。 走査像
3. ジグザグ模様を示す微細結晶の集合で、交差角度は貝殻内部と中央部では異な
ります(A)。このジグザグ模様は微細な結晶集合が交互に重なりあってできている
ことがわかります。(B)走査像
4. 針状〜柱状の結晶が整然と平行に配列しています。
まるで、ラワン木材からできているベニヤ板の仕組みと間違うほど似ております
(A・B)。走査像
5. 貝殻断面の中央部は微細結晶の交差する平行板状集合がさらに交互に重なり
合った構造を示します。このような交互積層の機構が薄い貝殻に必要な強度を与
えているのです(A・B)。走査像
6 貝殻が湾曲している部分の様子です。交差積層する針状〜柱状の結晶の束が少
しずつ方向を変えて集合し、全体として湾曲した形態をつくります (A・B)。走査像
7. カタツムリの殻をつくるこの見事な犬歯状〜稜柱状の結晶は炭酸カルシウム
(CaCO3)の成分からなる霰石(アラゴナイト)と呼ばれるものです。カタツムリ
の殻はアラゴナイトの微細な結晶集合からできているのです(A・B)。走査像
8. 真珠貝として知られるアコヤ貝の内壁断面の真珠層です(A)。この板状に重
なりあっている結晶もアラゴナイトです。この規則的な積層が真珠光沢をもたらす
要因です。カキ(牡蛎)の貝殻の様子です。薄板状の結晶がカードハウス状に集ま
って隙間の多い構造をつくっています。カキ(牡蛎)の場合は同じ炭酸カルシウム
(CaCO3)の成分からなるカルサイト(方解石)とアラゴナイト(霰石)の両者が
検出されます(B)走査像