第1回 塩釜高等学校教諭 石川俊樹

第2回 (財)自然環境研究センター・研究員 斉藤千映美

第3回 L課程 川田仁和・藤田裕子

第4回 塩釜高等学校教諭 石川俊樹・宮城郡七ヶ浜町立亦楽小学校 講師 牛坂 路子

第5回 北上町立相川小学校教諭 遠藤純二

第6回 自然環境専攻 宇野壮春

第7回 環境研 助手 溝田浩二

第8回 環境研 教授 伊沢紘生


第1回


日  時  平成10年2月7日(土) 13:30〜15:00
講  師   塩釜高等学校教諭   石川 俊樹
参加者  約30名
要 旨  石川先生からの報告書にかえて
キャンプの前のドウダ川の流れ。乾季で、水が著しく引いている。
岸から眺めるジャングルのキャノピー。左側に黒く映っているのが、クモザルの訪れるマタパロの木。
クマレというココヤシの一種。熟れはじめのこの実はサルも好きだが、人が食べてもうまい。
マラコという大木の花。幹から直接細い枝が出て、その先に花が咲く熱帯に多い乾生花の一種。早朝に花開き、その午後には枯れて落ちてしまう。
ウーリーモンキーは調査地の森の中ではどの動物よりも一番偉そうに振舞っていた。
産んだばかりの赤ん坊を背中に乗せ、そのヘソの緒を食べているフサオマキザルのメス。
ヘリコニヤの葉の裏にとまっていた体長5ミリメートルほどのカブトツノゼミの一種。

アマゾン・野生を見つめる最前線へ

 私は、1991年から宮城教育大学教授の伊澤紘生氏に師事し、宮城県金華山を中心に青森県下北半島や石川県白山地域などでニホンザルの生態調査に参加してきた。これらの調査地はいずれも伊澤氏が開拓し、ニホンザルの長期継続観察が実現しているフィールドである。 また伊澤氏は南米アマゾン地域でも新世界ザルの調査研究を継続し、コロンビアのマカレナ国立公園内に調査基地を維持している。その調査地訪問は私にとって長い間の夢であった。1997年12月、その夢がついに実現し2週間にわたってサルの仲間を中心に原始の熱帯雨林で動植物の観察を行うことができた。 その直接体験をほんの一部フィールドノートの記録をたどって以下に再現しよう。再現するのはジャングルで迎えた大晦日である。

 12月31日5時、暗いうちに寝袋から出るとすぐに着替えて伊澤氏と出発する。歩行には懐中電灯の明かりが必要だが、既に様々な鳥の声や遠くで鳴いているホエザルの声が聞こえる。猛獣のうなり声のようなホエザルの大声は、かなり離れたところまで届く。 だが目的はホエザルではなく、朝の集中採食に来るクモザルの群れだ。彼等がイチジクの大木に集まってくるのを伊澤氏は10日ほど前に見つけて観察を続けていた。

 5時30分、クモザルが目標の木に集まり始める。そのイチジクの木は現地でマタパロ(絞め殺しの木)と呼ばれる種類である。 マタパロは最初、蔓のように他の木にからみついて枝葉を高い位置に伸ばし、やがて自分の支えとなった木の幹を覆うように樹皮を成長させ、最終的にはその木を枯らして自分は巨大な板根で自立する。 その大木が北斜面の崖崩れによって視界が開けた場所にあり、ちょうど豊富に実をつけていたのである。その実を食べるクモザルの姿を、観察者は崖の上の同じ高さから見ることができる。 地上から樹冠部を見上げる観察では枝葉が邪魔になってサルの姿をとらえにくい。そこにサルがいると分かっていても、姿が見えない。前日までの観察でさんざん苦労していた私は、展望台とも餌場とも言えるロケーションを前に、観察地点の重要性を改めて思い知った。

 離合集散する社会構造をもつクモザルの生態や社会については、世界的にも詳しい研究がない。そのクモザルの生態解明を目的に、伊澤氏らのグループは今年から研究を開始した。野生動物の生態研究においてある程度まとまった成果をあげるには何年もの継続観察が不可欠だ。 その長期観察の初年度に、現地を訪問できた私は幸運だった。固体識別にはじまり、性別や年齢構成、行動域といった群れの概要は勿論、固体間関係、群間関係など社会構造を解明するには確かめなければならないことが山ほどある。 同時に採食生態や生殖行動、その他の休息や遊びなどの行動、他の動物との関わりや植生といったサルをとりまく環境についても観察が必要だ。そうした膨大な仕事につながる生態調査の端緒を直接体験できたのである。

 6時30分、1頭のメスが下の竹林に降りてから再びマタパロに戻り、南側の枝を伝わって森の中へ消えた。6時50分、2頭目が同じ枝を使って木を離れると、5分後に残ったサル達も森の中へ戻っていった。 クモザルの気配が消えたことろへ、今度はシロムネオオハシが3羽現れる。黄色いくちばしに黒い縁取りが入り、目のまわりは鮮やかな青。全体が黒い中で尾羽の付け根の下側が赤く、首の下方が白い。 続いて大型インコのキガシラボウシインコ、日本のオナガに似たクロガオルリサンジャクなど次々と極彩色の野鳥が実を食べていく。実を食べに来る鳥以外にも無私のような羽音をたててハチドリが身近に現れたり、日本では絶滅したトキの仲間で鮮やかな紅色をしたショウジョウトキの大群などが視界を横切って行く。

 7時45分、再び6頭のクモザルが下の竹林から現れる。さっきまで観察していた連中とは別の個体だ。彼等はマタパロの木に長居せず、1頭のオトナメスは一口も実を食べずに通過する。7時58分、また南から聞こえたクモザルの声を最後に気配が消える。森の奥へ移動してしまったようだ。やがて陽射しが強くなり気温が上がってくる。一斉にセミが鳴き始めた。足元を見るとハキリアリが盛んに木の葉を運んでいる。腕まくりした肌に汗が滲み、それを嘗めようと小さなハナバチがまとわりつき始める。このハチが人を刺すことはないが、耳や目に入り込んでくるのでうっとおしい。手で潰すとカメムシのような臭いがするので、仕方なくタバコの煙を虫除けにするが効果は薄い。9時30分に食事をとるため一旦キャンプへもどる。

9時45分、帰り道の途中でクモザルの群れに出会う。オトナオス1頭、オトナメス2頭、アカンボウ1頭、ワカモノ2頭だ。アカンボウを背負ったオトナメスがクマレというヤシの木に登り、10cmほどのもを口に運んでは次々と落とす。 落ちた実を見ると潰されて裂け目ができ、中の液が無くなっている。クマレの実は熟すと殻が非常に堅くなりナイフで思い切りたたいてようやく割れる位だが、この実はまだ柔らかい。クモザルは若い実を選んで中の水を飲んでいるのだ。 10時10分、群が離れていくのを見送り、私も落ちたクマレの実で喉を潤す。落ちたての実は青い果実の香りがし、液には微かな甘みがあってうまい。森の中では、しばしばヒトがサルのおこぼれにあずかることになる。

 10時30分、キャンプに戻ると助手のラミロ氏が食事を用意してくれていた。昨夜川へ投網に出て、ボカチコという鯉を細くしたような魚をとってきていた。その魚をさばいてぶつ切りにし、タマネギやニンジンなどの野菜と一緒に煮る。 それにプラタノと呼ばれるプランテイン・バナナを輪切りにして油で揚げたパタコンと米の飯がつく。日本の真夏と同じ暑さの中でも、皆こうした料理をしっかり食べる。 そしてコロンビア風に入れられたテイントと呼ぶ濃いコーヒーを飲み、タバコをふかす。その側を鮮やかなメタリックブルーに羽を輝かせながらモルフォチョウが舞っていく。少し離れた所では30cmほどのトカゲが落葉の音をたてている。 先日食べたパジャラという魚の大きな歯が並んだ下アゴの標本を作ろうと、骨に残った肉を楊子で出したりしながら食後の一時を過ごす。

 12時30分にキャンプを出ると間もなく、オレンジ色の毛をしたホエザルの群に出会う。アカンボウを含む5頭の群だ。私が通りかかると「グ、グ、グ・・・」と喉を鳴らすような低い声を出した。 しかし逃げるのではなく、少し樹上の一を変えただけでこちらを見つめている。見慣れぬ人間が来て少し緊張しているのかもしれないが、気持ちの余裕があるようで枝の上で寝そべっている奴もいる。 ホエザルに限らずキャップ周辺のサル達は人をあまり怖がらない。人を見て逃げないということは非常に重要で、特に野生群で細かいところまでつっこんだ観察調査をするには不可欠の要素だ。

 13時53分、朝のマタパロの木が見える崖崩れのところに再び来たが、ハシジロチュウハシというカラフルな鳥が実を食べていっただけでクモザルは現れない。 再び森の中へ戻り、フサオマキザルとリスザルの混群を見つけて観察する。14時35分、別の方向から枝葉の音がするので見ると、クモザルが近くに来ている。すると突然フサオマキザルの1頭が「ギャー」という悲鳴のような声をあげ、皆わらわらと移動し始める。 かなり慌てているようで、木の上から地面に落ちて走り去る奴もいる。騒然とした中で私は瞬間的に自分の行動をふりかえるが、観察者が騒ぎの原因とは考えられない。 おそらくクモザルの群との間で、単に群れ同士がはちあわせして驚いただけではない、何らかの交渉があったに違いない。残念ながら、その何かを私は見逃してしまったわけだ。

  14時50分、クモザルはマタパロの木に移動する。オトナメス2頭、アカンボウ、ワカモノの4頭だ。アカンボウを連れたメスに注目して観察する。このメスの顔の毛は真っ黒で、額や頬に特別な模様は見えない。 下にある竹林との境に伸びた枝の実を中心に食べている。連日の集中採食によって、残っている実が少なくなったためだろう。

15時25分、そのメスは採食を止め、太い枝に背中をのばしながら昼寝を始めた。腹のところにアカンボウがしがみついている。しばらくすると、別のところで採食していたワカモノが近づいてきて、そのメスの顔をのぞき込むようにした。 メスも目を開いてお互いを見つめあった後、ワカモノはメスの脇の下あたりに顔を埋めた。更に注意して見ていると、ワカモノは顔を上げて再びメスと見つめあう。そして今度はメスの逆の脇の下あたりに顔を埋めた。夢中でカメラを構えてシャッターを切り、双眼鏡に持ち替えて見続ける。 同じ動作が繰り返されて10分位続いたろうか、その間、アカンボウは両者に挟まれサンドイッチ状。やがてワカモノが離れ、メスはそのまま休憩を続けた。今見た光景は何だったのだろう。「乳飲み行動」と呼ばれる行動は、ウーリーモンキーで観察報告があったはずだ。 ウーリーモンキーはこのキャンプでも調査されており、オトナがよく遊ぶことで知られている。そのオトナオスがオトナメスの乳を飲む。

私が見たクモザルは、オトナオスにしてはやや小さかった。それでワカモノと判断した。また性別もおそらくオスだろうと思うのだが、断言はできない。 自分の曖昧な観察にもどかしさを感じながらも、それ以上に興奮の余韻が強い。私はひょっとすると、世界でまだ報告例のないクモザルのオトナオスの乳飲み行動を観察したかもしれないのだ。

 16時35分、崖崩れの観察地点を離れキャンプへ向かう。途中、伊澤氏から頼まれていたホエザルの泊まり場確認のため、尾根筋の南にある沢ぞいを回る。 伊澤氏が継続して追っていたホエザルの群れは、キャンプ近くの竹林を夜の泊まり場とすることが多いのだが、ここ1カ月その姿が見えないという。 それで一日の調査の終わりに泊まり場巡りをし、ホエザルが来ていたら翌朝早くに伊澤氏が直接確認するという手筈だ。限られた日数の中で最大限の成果を上げようとすれば、チャンスを逃がさないようにするしかない。 そのチャンスは今夜かもしれないのだ。沢筋はある程度見通しが利くのだが、それでも死角ができる。私は見落としのないよう注意して回ったがホエザルは見つからず、竹林のやや東側に真っ黒なウーリーモンキーの群を見て調査を終える。

 キャンプに戻るとすぐ石鹸と着替えを持って川へ向かう。長靴を脱ぎ、裸になって川に入ると、汗ばんだ肌にあたる水の流れが快い。しばし水につかった後、頭と体を石鹸で洗う。 体にぬった石鹸を水で流さぬまま作業着の洗濯に移るのがコツで、蚊やアブが寄ってこなくなる。乾季なので晴天続きで、毎日洗濯しても日中にすぐ乾く。これを繰り返すのでキャンプ生活は驚くほど爽やかだ。 人のいない川辺で遠くの山々と夕日に染まる空を見上げ、さっぱりとした気分で暗くなった道を戻る。道には翼と尾の先とが白いヨタカがいて、私の先へ先へと飛んで地面に降りる。 その周りを小さなフラッシュのように光るホタルが舞う。夜の食卓にはピラニアの仲間でカチャマという魚の刺身とあら汁が並んだ。刺身はくさみが全くなく鯛のようにうまい。日本から持ってきた味噌を使ったあら汁がこれまたうまい。 アグアルデイエンタというサトウキビの焼酎に青いレモンを絞って飲みながら、一日の出来事を皆と話して1997年の大晦日が暮れた。

私がアマゾンで過ごした2週間は、およそこのような毎日だった。海外旅行は勿論、これまで飛行機に乗ったことすらない私がアマゾンを体験できたのは、伊澤紘生氏をはじめとする多くの方々のご支援があったからだ。 >この場をかりて、その方々に心より感謝を申し上げたい。そして、国内のみならず海外の第一線で経験したことを今後どのような形で活かしていくかが、そもそも高校の国語科教師という門外漢を受け入れていただいたことへのご恩返しと考えている。 その私が現在実感しているのは、野生動物を対象としてフィールドワークは、単に生物学的な研究意義ばかりでなく、自然と人間との関わりといった自然保護や環境教育の根本的な問題を考える具体的な手がかりになるということである。


第2回

日 時 : 平成10年5月30日(土) 13:00〜15:00

講 師 :(財)自然環境研究センター・研究員 斉藤千映美

場 所 :宮城教育大学 224番教室

演 題 :『保全生物学から環境問題を考える』

講師紹介

1987年にお茶の水女子大理学部卒業後、東京大学大学院理学系 研究科に入学。1995年に卒業して、現在、自然環境研究センター の専任研究員として活躍中。東大大学院時代は宮城県金華山島やアフリカ のマダガスカル島で長期間のフィールドワークに従事。

現在は、北は北海道から南は九州までの日本各地で、野性生物の保全の ために奔走している。なお、氏は本年度後期から本学EEC・実践分野助教授 として赴任の予定。

参加者: 約30名

要 旨 :

 自然界を我々はどう認識するのか。我々の自然観はキリスト教以前と以後とで大きく変化した。キリスト教以前は自然に密着して生活しており、自然の中の樹木や野生動物や岩や山等に我々は神の存在を認識してきた。しかるにキリスト教以後においては、我々人間の延長線上に崇高なる人格神を捉え、その結果自然界のすべてのものは人間の掌中の存在となり、自然に対する人間の支配が確立した。しかし大航海時代とそれに続く植民地時代を通して、人間の手によって多くの野生動物が絶滅し、その反省の上に立って、自然をいかにして守っていくかという学問が西欧で成立した。その中で保全生物学とは最も新しい学問であり、自然保護という使命を持ち、問題を解決する方法を示すための学問分野である。

  保全生物学には2つの大きな目標がある。その一つは、人間活動が生物の種・群集・生態系に与える影響を明らかにすること、もう一つは種の絶滅を防ぐための実践的手法を開発することである。したがって学問上の特徴としては、学際的であること、直面している問題に対する回答を早急に発見する必要に迫られていることを、あげることができる。  では保全の対象になるのはなんなのか。それは生物多様性であり、遺伝子、種、群集、系のレベルすべての多様性を保全することである。それからスライドで紹介するのは、人的破壊が急速に進み生物多様性の危機が世界的に叫ばれ、世界中から注目されているマダガスカル島の自然について、自らが行ってきた活動の一端である。スライド紹介の部分は略す。

  結論としていえることは、今日において、ことマダガスカル島にかぎらず、日本国内でも世界のどの地域でも、保全生物学的研究の果たす役割はきわめて大きいということである。そのためにどうするかをわかりやすくいえば、まず情報を手に入れる(どこにどれだけ生息しているのか?)、次に目標を設定する(どんな状態を求めるのか?)、最後に対策を提案する(目標を達成するためにはどのような手段が必要か?)、という順で研究を進めていくことである。


第3回


日  時  平成12年2月10日(木) 16:20〜
話題提供者 川田仁和(L課程自然環境専攻3年)・藤田裕子(L課程健康福祉専攻2年)
 フィールドワーク合研所属の学生2名が、冬休みを利用し、伊澤先生に同行してアマゾン熱帯雨林研修に行って来ました。日本とはまったく異なる環境での丸1ヶ月の体験、大自然とじかに向き合って感じたことを、私たちと同年代である二人から聞いてみませんか?

第4回

日時  10月12日(木) 15:00〜16:30

場所  224教室

 この夏、本学卒業生2人が伊沢先生に同行し、アマゾンに野生動物の観察に 行きました。その体験を多数の写真とともに語っていただきたきます。 話題提供者と報告内容

『アマゾン・熱帯雨林の乾季と雨季』     石川 俊樹

岩手大 人文社会科学 昭和63年3月卒
宮教大大学院 教育学研究科 平成5年3月卒
現在 宮城県立塩釜高校 教諭

 1年を通して高温多湿で、常に草木の葉が所狭しと繁茂する熱帯雨林。アマ
ゾンについて我々が想像するとき、そのようなジャングルの姿を思い描くこと
が多い。しかし、私が実際に訪れることのできたコロンビア国マカレナ地域の
森は、それまで抱いていたイメージをはるかに超えて変化に富んでいた。とく
に乾季と雨季という気象条件の大きな違いによってもたらされる森の変化とそ
こに生きる野生動物たちの実際について、樹上の軽業師クモザルを中心とした
2回の観察体験をもとに紹介する。
   

『サルを個体識別して観察する面白さ』      牛坂 路子

宮教大 教育学部 平成10年3月卒
現在 宮城郡七ヶ浜町立亦楽小学校 講師
     
 宮城教育大学に在中の4年間は、宮城県金華山にすむ野生ニホンザルの1つ
の群れ(C2群)を追い続け、その生態を調査した。同時に青森県下北半島、石
川県白山山域、屋久島西部地域でそこにすむ野生ニホンザルの個体数等の継続
調査にも参加した。一方で、研究と教育と自然保護とを、ドッキングさせよう
というSNC構想のもと、金華山では、自然観察会の指導員を繰り返し務めた。
ところで、金華山C2群のサルは、島に生息する6群のうちでは比較的人馴れし
ていない群れであり、一頭一頭の個体識別は、常に心がけてはいたが、結局で
きずじまいだった。だから、個体識別を完全にした上でのサルたちの行動観察
という経験は持てずにいた。日本のサル学は、この個体識別法という観察手法
を導入することで世界の社会をリードしてきたわけだし、個体をきちんと識別
して調査すれば、とくに子供達の自然観察会に大きな力を発揮するだろうこと
は想像に難くない。私はそれを体験したかったし、それを通した実感が欲しか
った。幸い、今回のアマゾンでは、野生クモザルの1群の個体識別を行う機会
を与えられた。ここでは、その識別法や識別したことによってサルたちがどう
見えてきたかを中心に紹介する。

第5回

遠藤純二

日時:11月17日(金)15:00〜16:30

場所:223教室

『環境教育の課題と教育実践
〜中国国際環境教育研究大会に参加して』

総合的な学習の全面実施を間近に控え、学校現場では環境教育が活動の柱とし
て注目を集め、多くの学校でさまざまな実践が行われている。しかしその一方で、
水質汚染やリサイクル、CO問題などの環境問題を中心とした学習に終始してしま
うといった傾向も見られる。ここでは、この夏行われた中国国際環境教育研究大会
の様子をまじえながら、演者が宮城県金華山島の自然を中心として実践してきた
環境教育の実践例を紹介し、現在の環境教育の抱える問題点とその在り方につい
て議論したい。

第6回

宇野 壮春

日時:11月14日(金)13:10〜14:30

場所:223教室

『私にとっての熱帯雨林の豊かさ』

 この夏、姉妹校提携している本学とコロンビア国ロスアンデス大学の共同研究
フィールド、アマゾン熱帯雨林に、本学学生が伊沢先生に同行して、そこで新世界
ザルを中心とした野生動物の観察を行いました。その感動のフィールド体験を、
多数の写真やビデオを用いて語っていただきます。

 宇野
 この夏、伊沢先生の調査に同行して、コロンビア国マカレナ地域のアマゾン熱帯雨林
で一ヶ月のキャンプ生活をしてきた。厚く重い三次元の森の中で人間の非力さを実感
しつつ、同時にそれがうれしくて、熱帯雨林の偉大さに一喜一憂しながら暮らすことが
できた。今回の報告では、私の五感が強く揺さぶられたアマゾンの自然とそこでの暮らし
について紹介したい。