環境教育実践研究センターに期待する

学 長              江  崎  陽 一 郎 

 

 附属環境教育実践研究センターは、環境教育の必要を強く求める教育的、社会的要請を受けて、1997年4月、本学の附属理科教育研究施設を改組転換(廃止)して設置された。現在宮城県教育研修センター、仙台市科学館等環境教育関連機関との連携協力によって学校・地域等の要請に着実に応えている。

 附属理科教育研究施設は、本学創立の1965年4月に生物部門一部門でスタートし、66年4月に物理部門、70年4月に化学部門を増設して整備を終え、自然科学の急速な進歩を理科教育に反映させるために、科学の近代化に即応した理科教育に関する教育内容の研究と教材の開発などを行うとした設立当初の目的を達成するために教育研究を進め、大きな成果を上げた。一方、本学の改革の歩みとともに教育学部附属施設としての充実をはかり、従来の生物、物理、化学部門を生命、物質及び情報といった学際的な領域をカバーする部門に学内改組(措置)するなどを重ね、学内外の教育研究要請に応えてきた。このような施設内部の改革と教育研究の成果を基礎に現在の附属環境教育実践研究センターの発足がある。

 ところで人間が生きていること、生きていくことと環境は無関係ではあり得ない。しかし環境問題は、今や私たちの身近な日常生活の場の家庭、地域のレベルから地球規模までまた国家的、世界的課題として意識されるほどに重大で深刻な問題になっている。

 このような状況の中で、環境教育の学校教育での重要性と教科を横断する総合的な教育の必要性、緊急性は強まるばかりであり、授業として成立させるべき具体的で実践的な教材・教具の開発、提案が強く求められている。

 自然そのものを直接体験し、自然の教育力に学び、自然が生命を育むことを理解することの上に、自然の仕組みを理解し、自然をいたわる心を育てる学校教育における環境教育の在り方やその実践と言う環境教育の創造を目的・趣旨とする環境教育実践研究センターへの期待は非常に大きい。

 センター設置以降、新聞・報道等マスコミによる紹介からも窺えるが、地域に開かれセンターとして、蕪栗沼を中心とする水田・湿地フィールドの環境教育への活用、金華山でのスーパーネイチャリングセンター構想(SNC)の推進、広瀬川・名取川流域での SNC 構想の実践等地域を活かした環境教育、水環境に関わる実験観察法のフアイル化、インターネットサービスを活用した学校現場での学習環境の整備・運用等をシンポジウム、ゼミ、自然体験教育のためのフィールドワークを通して実践し、提案し続けている。

今後もセンターが、教師養成教育として学部教育に、現職教員の研修・再教育として大学院教育に、生涯教育として地域社会のそれぞれにおいて環境教育の徹底に貢献されるよう心から期待したい。