宮城教育大学環境教育研究紀要 第1巻
宮城教育大学附属養護学校内の樹木しらべ
高橋 義則
*・中村伊知郎*・遠藤 浩一*・會田 憲之**・平吹 喜彦***
宮城教育大学附属養護学校は、仙台市の市街地の西方に広がる青葉山に位置し、たいへん自然環境に恵まれている。常日頃この自然環境を生かした学習を組み入れてはいるが、豊かな自然に関心を示している児童生徒はまだまだ少ない。
今回の「学校内の樹木しらべ」は、高等部 C コースの生徒を対象とした活動である。将来就労を目指している生徒たちである。
高等部では、青葉山でのハイキングや野外炊飯など自然に親しむ活動を行っているが、青葉山の動植物や地形といった自然環境そのものを扱う学習はまだ行っていない。そこで、そうした学習の手始めとして、生徒たちが四季折々に目にしている校内の樹木を詳しく観察しながら、名札を取り付ける活動を行うこととした。構内の樹木一本一本の違いに気がつき、自然に親しむ楽しさを味わうことで、身近な自然に関心をもつことや、余暇の過ごし方の一助になると考えた。
なお、種の同定にあたっては、東北大学理学部附属植物園の大友敬雄氏からご指導を賜った。厚くお礼申し上げる。
2.目 的
校内の樹木を詳しく観察しながら、名札を取り付ける活動を通して、樹木についての関心を高めるとともに、自然と触れ合う楽しさを味わう。
3.計 画
(1) 対象生徒
高等部 C コース 14名
(2) 指導日時
平成10年11月5日(木)
13:30〜15:00
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月 日 |
内 容 |
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10月14日(水) |
・実践指導についての打ち合わせ |
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10月21日(水) |
・校内の樹木調査開始 |
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11月1日(日)
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11月4日(水) |
・名札取り付け用器具の準備 ・名札取り付け予定の樹木に番号札を |
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11月5日(木) |
・実践指導 樹木の観察、名札の取り付け |
4.授業の流れ
表2に示す。
5.実践指導を通して
(1)「樹木の名札の取り付けについて
名札に記した樹木名については、児童・生
徒にとって分かり易い表示とした。また、取
り付けに当たっては、見易さや樹木の保護を
考慮した(グリーンマップ(図1)参照)。
生徒自身で樹木を探し当てることができる
ように、グリーンマップと対応した数字を記
入した紙片を、あらかじめ樹木に表示してお
くようにした。
(2)生徒の取り組みの様子
当日は生徒一人一人が、グリーンマップ
(ただし、 樹木名は除いてある)を携行し、
学習に取り組んだ (図2〜4)。 全体を
ふたつのグループに分け、1グループあ
たり生徒7名、 指導者2〜3人とした。
紅葉している樹木、果実をつけている樹木、花が咲
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研究科(修士課程)教科教育専攻理科教育専修、
表1. 宮城教育大学附属養護学校グリーンマップ基礎データ
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整理 マップ中の 名 札 名 科 名 和 名 図鑑の巻および 番号 番号 ページ |
1 61 たらのき ウコギ科 タラノキ 木本�TP114
2 39 かえで カエデ科 イロハモミジ 木本�UP9
3 40 かえで カエデ科 コハウチワカエデ 木本�UP10
4 8 かえで カエデ科 トウカエデ 木本�Up17
5 56 いちじく クワ科 イチジク 木本�Tp92
6 41・42 ざくろ ザクロ科 ザクロの一種 木本編�Tp207
7 48 すぎ スギ科 スギ 木本�Tp15
8 55 プラタナス スズカケノキ科 アメリカスズカケノキ 木本�Tp151
9 18 つつじ ツツジ科 オオムラサキ 木本編�Tp161
10 16・21 つつじ ツツジ科 ツツジ科の一種 木本�Up134
11 22 つばき ツバキ科 ヤブツバキ 木本�Tp178
12 19 とべら トベラ科 トベラ 木本�Up34
13 4・23 にしきぎ ニシキギ科 ニシキギ 木本�Up35
14 13 まさき ニシキギ科 マサキ 木本�Tp187
15 29 あんず バラ科 アンズ 木本�Tp194
16 7 さくら バラ科 エドヒガンの一種 木本�Tp194
17 28 さくら バラ科 エドヒガン(イトザクラ) 木本�Tp194
18 47 さくら バラ科 エドヒガン(ジュウガツザクラ) 木本�Tp194
19 25・51 かりん バラ科 カリン 木本�Tp224
20 12 さくら バラ科 ソメイヨシノ 木本�Tp194
21 60 ピラカンサ バラ科 タビバナモドキ(カザンデマリ) 木本編�Up20
22 1・44 バラ バラ科 バラ属の一種 木本�Tp199
23 49 ゆきやなぎ バラ科 ユキヤナギ 木本�Tp183
24 20 さわら ヒノキ科 サワラ 木本�Tp19
25 3 ねず ヒノキ科 ネズミサシの一種 木本�Tp18
26 45 ひのき ヒノキ科 ヒノキ 木本�Tp19
27 27・64・46 いぶき ヒノキ科 ビャクシン(カイズカイブキ?) 木本�Tp17
28 2・6・32 いぶき ヒノキ科 ビャクシン(タマイブキ?) 木本�Tp17
29 58 こなら ブナ科 コナラ 木本�Tp71
30 10・11・36 あかまつ マツ科 アカマツ 木本�Tp7
31 14 トウヒ マツ科 ドイツトウヒ(オウシュウトウヒ) 木本�Tp11
32 62 はぎ マメ科 ニシキハギ 草本�Up205
33 50 はぎ マメ科 ツクシハギ 草本�Up205
34 30 はなずおう マメ科 ハナズオウ 木本�Tp235
35 24 ふじ マメ科 フジ 木本�Tp247
36 38 さるすべり ミソハギ科 サルスベリ 木本�Up95
37 52 ハナミズキ ミズキ科 アメリカヤマボウシ 木本�Up112
38 9・26・35 きんもくせい モクセイ科 キンモクセイ 木本�Up181
39 37 ねずみもち モクセイ科 ネズミモチ 木本�Up181
40 5・31 もくれん モクレン科 ハクモクレン 木本�Tp107
41 15 こぶし モクレン科 コブシ 木本�Tp107
42 63 いぬつげ モチノキ科 イヌツゲ 木本�Up27
43 43 うめもどき モチノキ科 ウメモドキ 木本�Up31
44 17 シュロ ヤシ科 シュロ 木本�Up236
45 57 ポプラ ヤナギ科 ヤマナラシの一種 木本�Tp32
46 34 やなぎ ヤナギ科 ヤマネコヤナギ 木本�Tp42
47 33 あじさい ユキノシタ科 ガクアジサイの一種 木本�Tp168
48 59 りょうぶ リョウブ科 リョウブ 木本�Up121
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植物名は『日本の野生植物草本�U、木本�T・�U』(平凡社)、および『原色日本植物図鑑 木本編�T。�U』(保育社)に準拠した。「マップ番号」はグリーンマップ(図1)上の番号と対応する。「名札名」でカタカナのものは外来種(明治期以降に渡来)である。「和名」の欄で括弧内の名称は品種名。「図鑑の巻およびページ」の欄で、ザクロの一種、オオムラサキ、タチバナモドキの3種だけが『原色日本植物図鑑』に準拠した。 |
いている樹木と、様々な樹木を観察することができた。また、実物に触れながら、葉や幹、果実の特徴(形、色、匂い、味など)、成長する高さ、名前の由来、原産地、日用品として活用されていることなどについて、分かりやすく、しかも楽しく説明を受けた。
同じ種類の樹木が2度目に登場する際には、指導者が樹木名を口に出す前に、元気に答えるといった

図1. 宮城教育大学附属養護学校グリーンマップ。図中の植物名は名札名と同じ。名札名でカタカナのものは
外来種(明治期以降に渡米)である。また、図中の番号の入った記号は、名札の取り付け方を表す:○
は幹にまきつけたもの、△は枝につり下げたもの、□は杭にして樹冠下の地面にさしたものである。
こともあった。
生徒たちの中には、グリーンマップを見ながら、名札を取り付ける樹木を熱心に、楽しんで探している者が大勢いた。探し出した時には、うれしそうに友達や教師に報告していた。
授業の終わりに発表してもらった感想には、次のようなものがあった。
「樹木にも、私たちと同じように、いろいろな名前があることを学びました。」
「木の名前をたくさん覚えた。これからは、樹木に関心をもっていきたい。」
「いろいろな実を調べたことが楽しかった。ざくろの実がすっぱかった!」
今回の「学校内の樹木しらべ」には、教育学部の教員や学生が参加したこともあって、普段と雰囲気も異なり、意欲を示して取り組んだ生徒が多かった。また専門的なことを分かり易く、ユーモアも交えて説明したことも、生徒達の関心をひいた要因であったと考えられる。さらに、実際に葉や果実を手にとったり、匂いを嗅いだり、口に含んだりしての観察であったので、理解し易く、楽しい活動になったようである。
以上のことから、生徒たちは、「学校内の樹木しらべ」を通して、自然に親しんだことがうかがわれる。また、「自宅の庭にある樹木についても調べたい」との感想がでてきており、今回実施した「学校内の樹木しらべ」は、日常生活においても、自然に対する関心を高めていくための橋渡しとなり、有意義な活動であったといえる。
6.引用文献
北村四郎・村田源。1971。原色日本植物図鑑 木本編
�T.保育社.pp.453.
北村四郎・村田源。1979。原色日本植物図鑑 木本編
�U.保育社.pp.545.
表2.授業の流れ
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時 間 学 習 内 容 指 導 上 の 留 意 点 |
13:30 1.ピロテイ―に集合する。 ○寒くない服装で集合する。
2.始まりのあいさつをする。
13:40 3.今日の学習についての話を聞く。 ○説明はわかりやすく簡潔にする。
4.2グループに分かれて活動する。 ○教師2〜3名でひとつのグループを指導する
○名札を取り付ける場所と順序に ○グリーンマップ(図1)から樹木名を除いた図を作成し
ついて知る。 ておき、配布する。
○この図を使用して、名札を取り付ける場所と順序を知らせる。
第1グループ:校門、ロータリー、校庭の周辺
第2グループ:池、養護・訓練教室、体育館や焼却炉の周辺
○樹木の観察を行う。 ○以下のような特徴を観察することで、樹木について興味、関心
を高めるようにする。
・葉の形、大きさ、色、匂い ・果実の形、大きさ、色、味
・幹や枝の色、模様、太さ ・木の高さ
・名前の由来や言い伝え
○樹木に名札を取り付ける。 ○身近な樹木(例えば、まつ、さくらなど)については、生徒か ら答えを求める(二者択一またはクイズ形式等で行う)。
○名札の取り付けは、教師の示範後に行う。
○樹木が生長するので、幹に取り付ける場合は、専用のスプリングを用いる。幹に取り付けられない場合は、枝につり下げたり、杭にして地面にさすようにする。
14:50 5.ピロテイーに集合する。 ○グループの代表から、樹木について学習したこと、または感想
を発表してもらう。
15:00 6.終わりのあいさつをする。
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佐竹義輔・原寛・亘理俊次・冨成忠男(編)1989.
日本の野生植物 木本�T.平凡社.pp.321.
佐竹義輔・原寛・亘理俊次・冨成忠男(編)1989.
日本の野生植物 木本�U.平凡社.pp.305.
佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎・亘理俊次・冨成
忠

図2.専用のスプリングを用いて、名札を取り
付ける。
図3.‘つばさ’を持つ植物・にしきぎの様子を
観察する。
図4.『ジャックと豆の木』を連想してしまいそ
うな、大きなふじの実を観察している様子。