宮城教育大学環境教育研究紀要 第1巻
腐 葉 土 を 作 ろ う
田野崎 健* ・ 後藤恵美子* ・ 高橋 義則*
1.はじめに
今年度から宮城教育大学附属環境教育実践研究センターとの連携のもと、「環境教育」の実践を推進することになった。この「腐葉土を作ろう」は、宮城教育大学附属養護学校の中学部を対象とした実践の報告である。
「腐葉土を作ろう」は、中学部の作業学習の時間に行われている活動である。作業学習は働く意識、意欲、態度を培うことをねらいとして、教育課程に位置付けられている。作業学習を展開するにあたっては、地域の特色や素材などを考慮して計画されることが重要視されている。
本校の園芸班では、青葉山の自然を活用し、11月から2月までの時期、「腐葉土作り」を組み入れている。出来上がった「腐葉土」は、野菜や園芸植物、稲の栽培に利用したり、附属小学校の花壇づくりに活用していただいたりしている。さらに、2年に一度開催される作品展の時に頒布し、好評を得ている。
2.活動のねらい
みんなで協力しあいながら落ち葉を集めて、腐葉土を作る。
3.活動の日時
平成10年11月11日(水)10:50〜12:00
4.参加者
本校中学部の園芸班
本校教官3名 生徒6名
環境教育実践研究センター
教官1名 教育学部学生3名
5.主な活動内容
○大学構内の樹木から落ち葉を集める。
*宮城教育大学附属養護学校
○集めた落ち葉をポリバケツに入れ、尿素を混ぜ、
水をかける。
○天地がえをする。
6.園芸班の年間活動計画
表1に示す。
7.授業の流れ
表2に示す。
8.生徒の取り組みの様子
11月11日(水)、園芸班の6人の生徒は、小春日和の中、大学構内の落ち葉集めに取り組んだ(図1〜3)。落ち葉集めに必要なリヤカー、熊手、ほうきなどの用具をみんなで協力して運んだ。
けやきの落ち葉を集めた。例年になく、落ち葉が少ない状況であったが、熊手やほうきで集めた落ち葉を熱心にビニール袋に詰めた。袋に入れる時は、落ち葉の色や感触を楽しんでいる姿が見られた。また、周りの草と落ち葉を区別して、ビニール袋に詰める様子も見られた。
天候の良いコンディションであり、みんな落ち着いて落ち葉集めに取り組んでいた。
集めた落ち葉を学校に運ぶ時もみんなで分担し、みんなで協力しながら運んだ。学校では、集めた落ち葉をポリバケツに移すグループと、落ち葉を細かく砕くグループに分かれての活動とした。
ポリバケツに移すグループは、大きなポリバケツにこぼさないように移しかえ、その後、水と尿素を入れ、混ぜ合わせる活動に取り組んだ。教師に声を掛けられることもあったが、注意深く取り組んでいた。
落ち葉を細かく砕くグループは、目の細かい金網を使って網目をくぐるまで細かく砕く活動をした(図4)。みんな、落ち葉を細かくすることに集中
して取り組み、金網の下は細かくなった落ち葉でいっぱいになっていた。
終わりの会では、教師から今日の活動を振り返って、生徒の頑張りに対する賞賛があり、生徒たちは成就感を得ていたようである。また、自然に触れて、表情もいきいきしていた。
図1. 落ち葉集めに向かう園芸班の生徒たち。
図3. 熊手で落ち葉を集めている様子。
図2.落ち葉集め:けやきの下で。
図4. 落ち葉を細かくしている様子。
表1. 年間活動計画。
班 名
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園 芸 班 |
期 間 |
6月8日〜6月26日予定時数(30) 11月9日〜12月18日予定時数(56)
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ね が い |
・花の苗作りや腐葉土作りの活動を通して、作業に意欲を持って取り組む態度を身に付けてほしい。 ・土や植物に親しみながら体を動かすことにより、体を使って働く喜びを味わってほしい。 |
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作 業 の 特 性 |
花の苗作りは、黒土や腐葉土そして肥料などを混ぜた培養土を作り、それに季節に合わせた花の種子をまいて育てていく作業で、このことにより、植物を育てる喜びを知り、豊かな情操の育成を図ることができる。また、腐葉土作りは、落ち葉を集めたり、それを腐らせて細かく砕いたりと体をたくさん動かす内容を含んでおり、身体機能の向上を図ることができる。さらに、自然に恵まれた本校では落ち葉を集めることが容易であり、環境を上手に利用した活動が展開できる。そして、これらの作業では生徒一人一人の特性等に応じた作業工程を用意することができ、結果が目に見えるため、見通しや意欲を持たせやすい内容であると考えられる。 |
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年 間 活 動 計 画 |
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花の苗作り:6月と11月〜12月 |
培養土を作る→培養土をポットに分ける→種子をまく→苗を花壇に移植する |
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腐葉土作り:11月〜12月 |
落ち葉を集める→落ち葉をポリバケツに詰める→天地がえをする→腐った葉を細かくする→袋に詰める |
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作 業 工 程
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教 師 の 支 援 |
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<花の苗作り> ○培養土を作る。 ・黒土、腐葉土、肥料を5:3:1の割合で混ぜる。
○培養土をポットに分ける。 ・ポットに移植ベラを使って培養土を入れる。
○種子をまく。 ・ マリーゴールド,矢車草,パンジー等季節ごとの種子をまく。
○花の苗を花壇に移植する。 ・本葉が4,5枚になったら苗を選ぶ。
○落ち葉を集める。
落ち葉をポリバケツに詰める。 ・手でこするようにして落ち葉を細かくする。 ○袋に詰める。 ・細かくした腐葉土を同じ大きさのカップにいれる。 ・カップの中身をビニール袋に詰める。 ・ビニール袋の口をテープでとめる。
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・各分担の作業がスムーズに行えるように、土ごとに色
・長方形のかごに空のポットを並べて、見通しが持てる
・教師が師範しながら、種子の扱いに注意するように説
・移植に適した苗のサンプルを提示する。
・一人で落ち葉を袋に入れることが難しい生徒には、両
・作業に対する見通しが持てるように、ポリバケツに詰め
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備考
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・各工程とも、一人一人に役割を持たせながら、友達と力を合わせる場面を設定する。 |
表2. 授業の流れ。
時間(分) |
生 徒 の 活 動 |
学 習 活 動 へ の 留 意 点 |
準備物 |
0
1
5
10
40
45
69
70 |
○始めのあいさつをする。
○本時の学習内容を知る。
○学校を出発する。
○落ち葉を集める。
○学校に帰る。
○集めてきた落ち葉をポリバケツに移す。
○天地がえ。 ○本時の活動のまとめをする。
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◆班長に注目し、班長の号令に合わせてあいさつをするように声掛けする。
◆大学構内の2号館前に行き、「落ち葉を集めてビニール袋に入れ、学校まで運ぶ」という話をし、今日の活動に見通しを持たせる。
◆準備物を用意しておく。
◆集める場所が偏らないように、作業場所を3カ所ぐらいに分ける。 ◆リヤカーで運ぶ。
◆これからの作業内容を話し、活動を分担して進めるようにする。
◆生徒が作業の工程の中で頑張っていたところを賞賛するようにする。 ◆班長に注目し、班長の号令に合わせてあいさつをするように声掛けする。 |
・ビニール袋 ・リヤカー ・竹ぼうき ・熊手
・ポリバケツ |