前頁へ 目次へ 次頁へ
研究論文

ロボット教材を用いた環境教育の検討

水谷好成*・岩本正敏**

Abstract : Various robots have been developed to improve our living environment. Robots cannot move around freely in the area with barrier. Education using robots has possibility of giving us new views of our living environments. Educational robot BontenMaru is a useful teaching material to learn robots for students unfamiliar with robots. Makimono language has specially designed for children to make programs of BontenMaru. The computer language can help for the untrained students to make easily programs of a micro-controller in Japanese Hiragana commands. A set of partner robots was created with BontenMaru kits. A garbage truck carried small trash for us to a garbage can robot, and the garbage can robot received the trash automatically. Creating the original partner robots gave new conception for improvement of our living environment.

Key Words: Educational Robot, BontenMaru, Micro-controller, Environmental Education, Partner Robot
  教育用ロボット、梵天丸、マイクロコントローラ、環境教育、パートナーロボット

 

1.はじめに

 我々の周囲を取り巻く様々な環境は日一日と変わっている。特に、近年の科学技術の進歩に伴う生活環境の変化は著しい。環境教育といえば自然環境にまず目が行くが、日常おかれている身近な生活環境に関して考えることも重要であると思われる。それでは、生活環境を考えるとはどういうことだろうか。車椅子使用者の目から周囲の生活環境を見直す。これも、身近な環境教育の一つと考えて良いのではないだろうか。健常者から見れば、なんの変哲も無いような段差でも車椅子では越えることが難しいことがある。スロープさえあれば大丈夫だろうと安易に考える者もいるかもしれないが、手動で車椅子を操作する場合には、スロープが少しでもきつくなると登ることはできず、さらに下りは上りに比べ危険度がより高い。いわゆるバリアフリーに関する問題である。現在の移動型ロボットの大半は車輪を使っているため、車椅子と同様にちょっとした起伏は移動の障害になってしまう。もちろん、段差を乗り越えたり、避ける機能を持たせることもできる。しかし、ここで注目すべきは、車椅子とロボットから見たバリアフリー環境の類似性である。このようなところに、ロボットの眼から見た環境教育の可能性があると考えられる。他方、ロボット自体が持っている環境改善の可能性もある。ロボットには、人間に難しい作業や単純作業の繰り返しなどを人間の代わりにさせることができる。これらは、ロボットを利用した様々な環境の改善の一端と考えられる。またAIBO(SONY製)などのペットロボットの開発と普及により、ロボットの新しい側面も見えてきた。従来の無機質的なロボットの概念から、現代人の心を癒してくれるロボットとして注目され始めている。子どもの養育を終えた夫婦の新しいコミュニケーションの手段としての要望もあるようである。ここには、ロボットの擬人化に関するある種の危惧もないわけでないが、心の環境の改善として考えることができないだろうか。近い将来、人間とロボットが共存する時代が来ると考えられている。このように、様々な側面からロボットと生活環境を関連づけることができる。ロボットと関連づけた新しい観点から見た環境教育の可能性があると考えられる。今回、教育系大学大学院の学生に教育用ロボット教材「梵天丸」を利用してパートナーロボットの製作を行わせた。ロボットに関する教育に対する学習が比較的未習熟な者でもパートナーロボットの製作が可能であることを示し、ロボット製作と組み合わせた環境教育の可能性を検討する。

 

2.教育用ロボット梵天丸の活用

1)最近のロボット

 世代の違いはあるが、ロボットと言えば、鉄腕アトム、鉄人28号、ガンダム、ドラえもんなどの様々なアニメーションに登場するロボット達を想像すると思う。これらはあくまで空想上のロボットであるが、近年のロボット関連技術の進歩で、それらに類似したロボットが実現する可能性はどんどん高くなってきていると言える。これらのようなロボットを創りたくて、ロボットに関わる勉強を始めた者は少なくない。1999年にSONYから発売された犬型のペットロボットAIBOの登場あたりから、本格的なペット型ロボットが普通の家庭にやってくるという時代が訪れてきた。最近、「癒し系ロボット」という言葉も耳にするようになり、従来の産業用ロボットに代表されるような無機質で冷たい感じのするロボットとは異なるタイプのロボットが考えられるようになってきた。
 ロボットと言っても色々なタイプがあり、分類も様々である。HONDAのP3やASIMOのようなヒューマノイド型ロボット、AIBOのような動物型ロボットを始め、一見ロボットに見えないような物まで多様である。自動機械とロボットの違いは何かということはけっこう難しいが、(1)外界の情報を得るセンサー、(2)外界に対して何らかの働きかけ(出力)をするアクチュエータ、(3)判断をするコンピュータを持っているというのが条件として考えられている。これらの要素を有していれば、必ずしも形状は問題ではなく、車椅子の形状であるがロボットの要素を持った物、あるいはロボットの機能を持った家までが範疇に入ってしまうかもしれない。また、高齢者の問題などが浮上してくる中、介護や福祉に関わる様々なロボットの開発も行われている。ロボットと共存する時代はすぐそばに来ており、ペットロボットも含めた様々なパートナーロボットがこれから登場してくるに違いない。

2)教育用ロボットの必要性

 本格的なロボットを製作するためには、様々な技術力が必要であり、学習するべき事項も多い。工学系の大学や高等専門学校などでは、電気・電子工学、情報工学など様々な専門知識を学習するための授業時間の確保が可能である。これに対し、教育系の大学においては、ロボット製作に関連する専門的な授業の時間を十分に確保することは難しい。しかし、少なくとも、「本格的なロボットは無理でも何らかのロボットは作ってみたい。」という要求にはなんとか応えたい。小学校6学年国語の中に「人間とロボット」という単元がある。このように、小・中学校の教育にも、これからロボットに関わる内容が増えてくる可能性は高いと考えられる。自らロボットを製作した経験を持ち、その楽しさを伝えられる教員を養成していきたい。そのためには、適切なロボット教材が必要になる。これまでのロボット関連教材としては、中学生を対象にした遠隔操縦(リモコン)型のメカニズムに視点を定めたロボットが多かった。高校生以上を対象にした自律型ロボットもあるが、価格的に高価であるという問題と制御言語がC言語などであり、ロボットを学習する前提としてあらかじめ学んでおくべき事柄が少なくない。我々のグループが開発してきた教育用ロボット「梵天丸」の活用が、初学者によるロボット製作を可能にしてくれると考えられる1)。ロボットの初学者においても、ロボット製作を楽しむことは可能である。むしろ、初学者においてこそロボット製作が可能であることを示していくことがより重要であると考えており、その教育的な効果は高いと思われる。

3)教育用ロボット梵天丸

 「梵天丸」は、小・中学生を対象に開発された教育用ロボット教材である(岩本・水谷・中村、1998他)。マイクロコントローラ(PIC16F84)で制御され、前方左右にある赤外線LEDの反射光を中央の赤外線受光素子で検出することにより、前方および左右前方の障害物の有無を判断することができる2)。基本動作としては、デファレンシャルドライブの二輪駆動によって前進・後進・回転などの移動行動が選択できる。
 梵天丸では「まきもの言語」と呼ぶ専用の制御言語を用いてプログラムを作る。この言語では、「だん」と呼ぶ小さなプログラムを集めた「じゅつ」と呼ぶ一つのプログラムを作る(図1)。プログラムの各だんは、1つの行動命令(こうどう)とその行動の回避条件(じょうけん)で成っている。
 小学生を使用者として想定し、コマンドはひらがなと数字で記述している。「こうどう」が動作を命令するコマンドで、ぜんしん、みぎまわれ、ひだりよれ、こうしん、などで二輪のタイヤの動きを指示する。タイヤの回転速度の指定で、移動速度や回転する速度などを調整する。「じょうけん」は実行している動作命令から抜け出す(回避する)条件を示している。「だん」という最小のまとまりの中で「こうどう」コマンドを実行しており、「じょうけん」の成立に従って、順次、「だん」を遷移していく。「じょうけん」には、(1)障害物を検出するコマンドとして、みぎだ、ひだりだ、まえだ、(2)時間を計測するコマンドとして、じかん○で、そうじかん○で、などがある。さらに「じょうけん」コマンドに、!がつくと否定を表す。たとえば、「みぎだ」は「右に物があったら」、「!みぎだ」は「右に物がなかったら」という意味になる。
 この梵天丸の基本キットおよび制御言語である「まきもの言語」の使用により、障害物の検出と時間の測定を使ったオリジナル動作をするロボットを作ることができる。使用するコマンドは動作や条件を連想しやすい自然な言葉にしているので、特別に学習する時間をもうけなくともプログラムを作ることが可能である。また上述のようにひらがなコマンドであるため、小学生でも短期間でプログラミングが容易にできる。

:だんめい
 こうどう
 じょうけん :次のだんめい
図1 まきもの言語の「だん」の基本構造
4)梵天丸キットの拡張的な活用

 初歩的な梵天丸の改造(機能拡張)としては、外装の工夫や移動軌跡を描画するためのペンの追加などができる(水谷・岩本、2000b)。さらに、梵天丸の中枢であるマイクロコントローラ(PIC16F84)の使用可能(未使用)なディジタル入出力ポート機能を使う方法がある。梵天丸の本体基盤上のピンヘッダを介して、外部出力装置(モータ・LEDなど)および入力装置(センサ類)を接続することにより、基本キットにハードウエア的な改造を加えたオリジナルロボットの創造が可能になる。
 マイクロコントローラの制御プログラムを作るためには、通常はアセンブリ言語やC言語などの何らかのプログラム言語を学習する必要があり、難しいと考えられがちである。しかし、梵天丸で用いるまきもの言語では「つけ」・「けせ」のこうどうコマンドが用意されており、ディジタルポートの出力制御が可能である。「つけ○」で、指定したポート○のディジタル出力をHighに、「けせ○」でLowに制御できる。○はマイクロコントローラのポート番号に相当する。梵天丸の本体基盤上にあるピンヘッダーは、パソコンからROMライタを介してプログラムを書き込むインターフェースとして使われているが、このピンヘッダーを介して未使用のディジタルポートを利用できる。PIC16F84の電流駆動能力は高く、LED程度であればダイレクトにON/OFFさせることができる。モータやリレーなどのように電流がさらに必要なデバイスを使用する場合は、トランジスタや専用のドライバICを介せば良い。この方法で梵天丸基本キットに外部デバイスを制御する機能を簡単に追加できる。
 一方、周囲の情報を調べたり、外部から何らかの指示命令を送る方法としては、赤外線リモコンを利用する方法が用意されている。「リモコン○だ」というコマンドで、赤外線リモコン(SONY製)のチャネル設定信号(1〜15)を弁別して利用できる。ここで、○はチャネル番号である。さらに、「に××××だ」というコマンドを使えば、マイクロコントローラの入力ポートの状態を調べることもできる。外部に光センサやメカニカルセンサなどを追加すれば、それらから周囲の情報を入手することができるようになる。
 このように「まきもの言語」を活用することにより、梵天丸の中枢であるマイクロコントローラの学習が容易になるとともに、梵天丸の改造が可能になる。梵天丸キットの改造以外にも、マイクロコントローラ自体の学習に利用することができる点もこの教材の魅力と言える。ひらがなコマンドを用いたまきもの言語は、大学生には簡単すぎるかもしれないが、コンピュータ言語に不慣れな学生に対してロボットの学習を導入する場合、このまきもの言語は大変有効である。さらに、まきもの言語環境ではアセンブリ言語も利用できるので、用意されたひらがなコマンドで練習をした後に、さらに上級の学習としてアセンブリ言語の学習に進むと良いだろう。
 梵天丸キットを車型のロボット教材として、原型のまま利用するのではなく、制御用のパーツとして考えることもできる。すなわち、入力として赤外線センサを持ち、出力として2つのモータ制御ができるマイクロコントローラを搭載した制御用ボードとして活用する方法である。実際、後述する「ゴミ箱ロボット」は、梵天丸キットを制御ボードとして利用しており、原型からはかなり改造された物になっている。

 

3.オリジナルパートナーロボットの製作

1)パートナーロボット大会への参加

 ここでは、宮城教育大学の大学院学生の授業と関連させてパートナーロボットの製作を行った様子を紹介する。このロボット製作にあたり、パートナーロボット大会(大会長:東北大学大学院中野栄二)に参加することを目標にした。この大会では、小・中学生を対象としたロボットアイディアコンクール以外に競技部門と提案部門があったが、大会の趣旨や各部門の内容などを検討し、ロボットの初学者でも参加が可能と思われた提案部門に参加することにした。製作する学生が持っている技術の範囲で実現可能であり、この部門で求められているロボットとして、自分の代わりに何かをしてくれるロボットを考えた。最終的には、「病気やけがなどでベッドから離れられない人の代わりに、軽いゴミクズを離れた場所のゴミ箱に運ぶことでゴミ捨ての手間を省き、不便さを少しだけでも減らすことが出来るようにすること」を目的にロボットを設計・製作することに決定した。前述したように、梵天丸キットをベースにして、マイクロコントローラの入出力ポートの拡張利用とリモコンコマンドの利用によって、以下に示す「ゴミ捨て梵天丸」を製作した。

2)ゴミ捨て梵天丸の機能

 製作した「ゴミ捨て梵天丸」は、a)ゴミ運搬ロボット、b)ゴミ箱ロボット、c)スタート位置誘導ビーコン、の3体一組でゴミ捨ての動作を実現する。3体の間では、赤外線リモコン信号(1〜15)を利用して交信を行う。
 ゴミ捨てを行う一連の動作は、以下の手順で行う。

  1. ゴミ運搬ロボットにゴミを入れる。
  2. ゴミ運搬ロボットがゴミ箱ロボットの前まで移動する。
  3. ゴミ運搬ロボットがゴミ箱ロボットの塵取りにゴミを渡す(落とす)。
  4. 塵取りに入れられたゴミをゴミ箱の中に捨てる。
  5. ゴミ運搬ロボットはスタートした場所に戻る。
a)ゴミ運搬ロボット: 梵天丸をベースに、ゴミ(紙屑等)を入れる箱(ゴミ運搬箱)を2階建てのように追加した構造になっている(図2)。ゴミ運搬箱をアームで支え、外付けモータよるアームの揺動運動でゴミをゴミ箱ロボットの塵取りに落とす。運搬ロボットは、前部中央の赤外線受光センサで、ゴミ箱ロボットおよびスタート位置誘導ビーコンから送られる赤外線リモコン信号を探して、その方向に移動する。赤外線受光センサに約5cmの筒を取り付け、赤外線の散乱光を除いた誘導リモコン信号の直接光のみを検出するようにした。ゴミ投げ命令を受けると、移動動作を停止し、ゴミ運搬箱を倒してゴミを塵取りに落とす。ゴミを落とした後、ゴミ運搬箱を元の状態に戻し、その場で回転(反転)してスタート位置誘導ビーコンを目指して移動を始める。
b)ゴミ箱ロボット: ゴミ箱部、塵取り部、赤外線リモコン信号発生部によって構成されている。梵天丸キットの本体基盤を利用した制御ボックスで、それらを統括・制御する。赤外線リモコンLEDからは、ゴミ運搬ロボットの誘導とゴミ投げ命令などの信号を送る(図3)。制御ボックスは、梵天丸の赤外線による障害物検出機能を使って、ゴミ運搬ロボットの接近を検出することができる。初期状態では、ゴミ箱ロボットの位置を知らせる誘導信号を発生する。ゴミ運搬ロボットの接近を検出すると、ゴミ投げ命令信号を送る。塵取りでゴミを受けたのち、塵取りをラダーチェーンで持ち上げ、ゴミ箱の中にゴミを落とす。塵取りの駆動は梵天丸の移動用モータを改造して行った。塵取りはゴミ箱の上端の高さに達すると、自重で倒れてゴミをゴミ箱の中に落とす。ゴミを落とした後は、塵取りをゴミ受けの位置に戻し、初期状態になる。
c)スタート位置誘導ビーコン: スタート位置を示す赤外線リモコンの誘導信号を発生するビーコン機能を持った装置で、ゴミ投げ動作後のゴミ運搬ロボットを誘導する(図4)。

図2 ゴミ運搬ロボット 図3 ゴミ箱ロボット(前面)
 
図4 スタート位置誘導ビーコン
3)ゴミ捨て梵天丸の動作

 製作したゴミ捨て梵天丸は、以下の手順でゴミ捨て動作を順次行う。

  1. ゴミ運搬ロボットの電源スイッチを入れると、スタンバイ状態になる。その状態でゴミを乗せ、赤外線リモコンでスタートを指示する。スタート信号を受信すると、ゴミ運搬ロボットは、その場で回転運動を開始し、ゴミ箱ロボットから発せられている赤外線誘導信号を探す。誘導信号を探知すると、その方向に直進し、誘導信号を見失うと回転して、誘導信号を再度探す。この繰り返しで、ゴミ運搬ロボットは徐々にゴミ箱ロボットに接近していく。
  2. ゴミ箱ロボットは、図5(a)に示した制御ボックスの接近物体検出センサの前を物体(ゴミ運ロボット)が通過すると、指定した時間経過後に、ゴミ運搬梵天丸に赤外線リモコンで停止信号を送る(図5(a))。その信号を受けたゴミ運搬ロボットはその場で移動動作を停止する。停止までの時間は、接近物体検出センサと塵取りの位置関係で調整する。
  3. ゴミ箱ロボットの直前で停止したゴミ運搬ロボットは、ゴミ運搬箱を前方に回転して倒し、塵取りの上にゴミを落とす(図5(b))。ゴミを落とした後、ゴミ運搬箱を元の位置に戻す。
  4. ゴミ箱ロボットは、塵取りにゴミを受けた後、塵取りをリフトのように上昇させる(図5(c))。ゴミ箱の上端まで塵取りが上がると塵取りは自重でゴミ箱の方向に倒れる(図5(d))。それと同時に塵取りに乗せられたゴミがゴミ箱の中に落ちる。ゴミを落とした後、モータを逆方向に回転し、塵取りを元の位置まで下げる。
  5. ゴミ運搬ロボットは、ゴミ投げ動作を終えると、その場で180°反転し、スタート点を探すモードになる(図6(a))。スタート点におかれたスタート位置誘導ビーコンから発されている誘導信号を探して、(1)と同様の手順で戻っていく(図6(b))。

(a) ゴミ運搬ロボットを検出する (b) 塵取りへゴミを投げ落とす
 
(c) 塵取りを上昇させる (d) 塵取りを倒してゴミを落とす
図5 ゴミ捨て梵天丸のゴミ捨て動作

 

(a) ゴミ運搬ロボットが反転する (b) スタート位置誘導ビーコンへ接近する
図6 運搬ロボットのスタート位置への帰還

 

4.ロボットと関連した環境教育の可能性

 梵天丸を利用して、宮城教育大学大学院の授業の中でパートナーロボット「ゴミ捨て梵天丸」を製作した。まきもの言語によって、マイクロコントローラのプログラムも短期間で作成できた。基本的な学習に加えて拡張的な命令や改造の方法を適切に指導することにより、簡単な仕組みのパートナーロボットであれば、設計と製作ができることが示された。さらに、このようなロボットの製作と生活環境との関連性を考慮した授業展開を考えれば、従来とは異なった側面から環境教育に迫ることができると考えられる。授業の展開として、次のようなものはどうだろうか。

  1. イントロダクション(環境とロボットの関係)
  2. 梵天丸の基本キットの製作と基本機能の学習
  3. 梵天丸の基本コマンドによるプログラミング
  4. 梵天丸の拡張コマンドとマイクロコントローラの入出力ポートの使用方法に関する学習
  5. パートナーロボットの設計
  6. ロボットの製作・改良
  7. パートナーロボットの可能性に関する検討
この授業の中でロボットとの共存を考えた生活環境の改善を考えさせることが可能である。今回のように、パートナーロボット大会の参加を想定し、大会の意義から導入するのも一つの方法と考えられる。パートナーロボットとしては様々なタイプが考えられるので、製作者のレベルに合わせて適切な目標設定をすることができる。

 

謝 辞

 本研究の遂行はメカトロで遊ぶ会の多くのメンバーから協力を得て行われていることをここに感謝する。また、本研究は、平成11年度・12年度教員養成カリキュラム改善に関する研究・開発経費の補助を得て行われた。

 

引用文献

岩本正敏・水谷好成・中村昇 1998 子供用ロボット教材の開発、ROBOMEC '98 1BIII4-3
岩本正敏・水谷好成 1998 メカトロニクス教材開発と社会教育施設での実践 平成10年度電気関係東北支部連合大会 2H5
水谷好成・岩本正敏 1998 マイクロコントローラを搭載した自走型ロボットの教材化 産業技術教育学会第41回全国大会 p.27
水谷好成・岩本正敏 2000a制御教材としてのロボット教材「梵天丸」の活用 産業技術教育学会第43回全国大会 C-16
水谷好成・岩本正敏 2000b お絵かきロボットとしての「梵天丸」ロボット教材 産業技術教育学会第43回全国大会 F-5


1) 著者らは、メカトロを通して子ども達と遊ぶ技術者を中心とした市民グループ「メカトロで遊ぶ会」として、梵天丸を使ったロボットに関する教育活動を仙台を中心に行っている。
http://www.robotics.is.tohoku.ac.jp/TORO
2) 教育用ロボット梵天丸は、仙台生まれ(開発)で、1つ目のロボットである。そこで、伊達正宗の幼名をいただいて「梵天丸」と命名した。

 

* 宮城教育大学教育学部生活系教育講座
** 東北学院大学工学部

 

前頁へ 先頭へ 目次へ 次頁へ