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環境教育につらぬかれている精神は、自然へのいたわりと愛情であろう。自然
に対するおもいやりや感受性は教室授業だけでは育たない。自然そのものを直接
体験し、自然のもつ教育力に学び、自然が生命を育む力を持つことを理解するこ
とであろう。
今日、地域自然からグローバルな地球環境にいたるまで、人間も自
然界のシステムを構成する一員として、自然と共生する姿勢が求められている。
児童生徒の「理科離れ」が憂慮され、また、3Kで象徴される高等教育における
理工系への敬遠が指摘されて久しい。ややもすると、自然を征服するために存在
するかのような科学技術信仰と知識偏重の風潮が問われているといえる。
自然界
や自然物に対する驚きと発見、そこから得られる感動と畏敬、これらを学校教育
に求めることは不可能なのであろうか。
平成四年度から実施に移されてきている新学習指導要領では、幼稚園で領域
「環境」が、小学校低学年で「生活科」が新たに設けられ、さらに環境教育指導
資料(文部省初等中等教育局)が刊行され、学校教育に環境教育が正式に導入さ
れた。しかしながら、教育現場に環境教育が定着するためには、教育体制の整
備、授業時間の確保、適切なフィールドの選定や安全対策など多くの課題が残さ
れている。なかでも環境教育の主体的な推進役である現職教員の関心を高めるこ
と、そして力量のある教員人材の養成を行うことは最重点課題でもある。
環境教
育の推進は、従来の教科書中心の教室授業から児童生徒を開放し、野外行動型の
学習活動を採用することにつながっている。これは言い換えれば、従来の「知識
獲得」授業から「感動体験」授業への転換を意味している。
この点からすれば、
環境教育の推進はこれまでの学校教育に大きな変革をもとめるものであり、その
ためには、なにはともあれ、ゆとりを持った学校教育の体制づくりがのぞまれる
のである。環境教育は、学校という閉じられた世界で、昨今まったなしの解決を
迫られているさまざまな現実的な諸問題に対し、児童生徒の素直な自然認識や社
会構成員としての自覚を促すとともに、子供達の内面を啓発する情操教育に通じ
るものであると言っても過言ではない。
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