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活動報告

平成12年度フレンドシップ事業報告

斉藤千映美*・見上一幸*

 

 フレンドシップ事業とは、将来教職に就こうとする大学生に対して、在学中から小・中・高等学校の児童・生徒と交流する機会を与えることにより、教員としての資質向上を目指すものである。平成9年度より文部省の助成が開始され、本センターでも同年度から実施している。4年目にあたる今年度の実施内容について以下に報告する。

 

実施の形態

 フレンドシップ事業は原則として、大学の講義、実習などとリンクして行われる。本センターでは、講義科目「環境教育b」(前期2単位、全学年対象)の受講生を対象とし、平常の講義と合わせてフレンドシップ事業への参加を義務付けた。受講生は33名であった。なお、日程の都合上フレンドシップ事業に参加できなかった学生については、別途実習を行った。

 

事業の構成

 野外実践を主体とする3つの実践プランを作成し、日程に合わせて学生がいずれかに参加できるようにした。3つの実践は、蕪栗沼自然観察、志津川磯探検、広瀬川自然観察である。

 

事業までの流れと実施要領

 事業の実施にあたり、企画運営のための協議会を繰り返し実施した。年度開始までに見上・斉藤が仙台市科学館との協議を経て3つの実践プランの素案を作成した。引き続き各実践プランについて、連携協力機関である宮城県教育委員会、仙台市教育委員会、田尻町教育委員会、志津川町教育委員会、志津川町自然環境活用センターと協議の後、さらに対象となる学校への正式な協力依頼を行った。
 内容等が決まった段階で、参加学生にガイダンスを実施した。各実践とも、事前の実習を義務付けた。実施の具体的内容については、別途報告を行う。

 

実施後の反省と評価

 実施後、協議会で反省を行うとともに、総合的評価の一環として、12月にシンポジウム「体験そして感動−総合的な学習の時間における環境学習−」を開催した。野外実践を核とする環境学習のあり方についてさまざまな現場の取り組みが示された。

 

成果と課題

 学生の参加態度、終了時の声からは、事業が講義科目として学生に特別な印象を与えていることが推察された。その理由は、通常の講義とは異なり直接子どもから学べるということ、また野外実践というなにが起きるか予測しにくい状況で、子どもの柔軟な反応に触れることができたという点につきる。学外に飛び出し、豊かな自然の場で子どもたちと時間を共有することにより、子どもたちと素直に心を通わせあい、それを痛烈な、忘れられない記憶にすることができたのである。履修学生が1年生であったため、小学生の指導という点からみるとやや不満足な点もあったが、子どもとの触れ合いを先入観なく受け止められるという点でむしろ有効であった。
 問題点の一つは、時間の限界である。野外実践には不確定要素が多いため、短い時間のなかでは学生が「指導する」側の立場と要素を体得することに懸命にならざるえず、「学ぶ」という子どもの視点と反応をよく観察するまでにはいたらない。始めは小集団の子どもを観察し、次に自分が教師の立場となって子どもに対することを試みる、という2段階に分けることができれば、学生にとって得るものは大きいだろう。ただし、現在の実施枠の中ではこうした拡大がなかなか難しい。
 実施側としては、開催にかかる様々な労力の問題がある。通常の講義に野外実践を組み込むためには、土日を活用して準備と実施をせざるを得ない。前年度からはじまる協議、打ち合わせなどを含め、通常の講義形式の授業とは比較にならないほど、時間と労力が必要である。ただ本年度も無事完了できたのは、連携機関をはじめ指導に協力を頂いた方々に負うところが大きい。各位に心から感謝申し上げる。
 学生と子どもが直接触れ合えるチャンスは貴重である。限られた時間と予算の枠の中では精一杯の実践を試みているが、より充実した体制で臨むことができれば、さらに大きな成果が上がると確信している。

 

* 宮城教育大学教育学部附属環境教育実践研究センター

 

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